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生理前、生理中の胸の張りや、胸の痛みの原因と対処法とは?

生理前や生理中になると、胸が張り、時には胸に痛みを感じることがあります。生理期間中の胸の張りや、胸の痛みはどのような原因が考えられるのでしょうか?また、胸の張りや胸の痛みを和らげる対処法も教えてください。

専門家からの回答
生理前になるとホルモンの影響で胸が張ることも。下着などで痛みが和らぐ工夫をしましょう。
3行でまとめると?
  • 胸の張りは、生理前のホルモンの波が正常にできている証拠
  • 触るとゴツゴツしている場合は、乳腺症の可能性も
  • 生理前にはバストサイズが上がることも、下着などで調整を

胸の張りや痛みの症状と時期

月経(生理)前に胸が張った感じがすることは珍しいことではなく、生理前は何となく下着がきつい感じになる・普段自覚しない胸のツッパリ感を感じるという程度の軽度の変化も含めると、正常な排卵周期の方のほとんどが何らかの症状を自覚しています。

※「生理」は医学的には「月経」と言いますが、ここでは以下、一般的になじみの深い「生理」という表記に統一いたします。

生理前になると胸に痛みを感じることも

人によっては、胸の張りだけでなく、乳腺が硬くなってしこり状に触れたり、下着がつけられないほど張りがひどくなったり、階段を降りる時の振動だけでも痛みが出たり、乳首が敏感になって痛みを感じたりする場合もあります。

いずれも「病気」とは言えない症状ですが、生理前症候群の症状の1つとして出現している可能性もあり、症状がつらければ治療の対象になります。通常は生理10日くらい前から症状が出始めて、生理期の後半にはなくなります。

生理前、生理中の胸の張りや痛みの原因とは

生理前に胸が張る原因は、排卵後に分泌される黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用によります。黄体ホルモンは、別名「妊娠のホルモン」と呼ばれており、妊娠の準備をしたり妊娠を継続させたりするのに重要な働きを持つホルモンです。

生理前のホルモン変化と胸への影響

子宮内膜に対しては、内膜を着床に適した状態に変化させる作用を持っています。また、乳腺に対してもこのホルモンが作用して、授乳の準備をしている状態になります。乳腺は、血液から母乳を抽出する腺房という部分、乳汁を乳頭まで誘導する乳管、そしてこれらの構造を支える間質から成り立っています。

黄体ホルモンの分泌が増加し、子宮内膜が妊娠の準備をし始めると、乳腺も授乳に備えて腺房や乳管が増殖して膨らんだ状態になり、問質にも血液が集まって充血していきます。

生理直前には乳房は平常時の30~40%も容積を増やすといわれています。こうした乳房の変化を、乳房の痛みや緊満感として自覚する人が多く、「生理前は胸が張る」ということになるのです。通常は張りを自覚するだけで痛みまでは伴いませんが、張りがひどくて触ると痛みが出やすくなったり、乳腺症を伴っているために痛みがメインで出る場合もあります。

胸の張りは、本当にホルモンバランスの乱れ?

これらの胸の張りが、「ホルモンバランスの乱れ」による症状だと思われている方も多いようですが、きちんと排卵してホルモンの「波」が作られるからこそ出る症状なので、一概に「ホルモンバランスが乱れている」とはいえません。そもそも、「ホルモンバランスの乱れ」とはどのような状態を指すのでしょうか?

医学的には、下記のような状態であれば、すべて「ホルモンバランスが乱れている」といえます。

 ・脳から卵巣に命令を出すホルモンが出ていない
 ・脳から卵巣に命令を出すホルモンのうちLHだけが高くなっている
 ・卵巣から出ている卵胞ホルモンも黄体ホルモンも少ない
 ・卵胞ホルモンが多量に出すぎて黄体ホルモンが出ていない

つまり、ホルモンバランスが乱れると、胸の張りの原因となる黄体ホルモンはむしろ少な くなるはずなのです。そのため、無排卵で生理が来ている場合は生理前の症状は出にくく、胸の張りも出現しません。

月経前症候群もそうですが、生理前に「ホルモンの影響を受けて」不調が出る場合は、むしろきちんと排卵してホルモンの「波」ができているということなので、ホルモンのバランス的には乱れていない可能性が高くなります。

月経前症候群(PMS)とは?

月経前症候群(PMS)は、排卵後から月経が来るまでの期間に、心身の不調が現れる病気です。排卵後すぐに症状が出て、月経2週間前から不調が続く場合もあれば、月経直前の2~3日だけ症状が気になるという場合もあります。

心身ともに様々な症状が出るのが特徴

生理前に出る症状は非常に多彩で、体の症状は腹痛・腰痛・便秘・むくみ・肩こり・めまい・頭痛・吐き気・だるさなどが多く、精神的な症状は気分が落ちこむ・情緒不安定になる・イライラする・やる気がなくなる・怒りっぽくなる・些細なことが気になる・集中力がなくなる、などの症状がみられます。

身体的な症状の1つに胸の張りや痛みを自覚する人もいます。これらの症状が、生理数日~2週間前から出現し、生理がくるとスッキリ消えてしまう場合は月経前症候群の可能性が高くなります。

PMS以外では乳腺症の可能性も

乳腺そのものの異常として、「乳腺症」があると生理前に胸が張ったり痛みが出たりしやすくなります。乳腺症というのは、乳腺におこるいくつもの変化や状態に対してそれらをひとまとめにした呼び方です。

つまり、乳腺に正常とは違った変化が見られますよ、という意味で、乳腺炎や乳腺嚢胞など明らかな独立した病気とは区別されます。最近は乳腺症そのものは病気として扱わない方針となっていますが、検診を受けた時や胸の張りが気になって乳腺外科を受診すると「乳腺症です」と言われることがあります。

乳腺症の部分は、触ると少しごつごつした感じで、正常な乳腺より硬くなっている場合が多く、人によっては生理前に触れるとしこりがあるように感じる方もいらっしゃいます。乳腺症と乳がんは関連性はなく、乳腺症があるから乳がんになりやすいということはありません。ただ、自己触診をした際などに、乳がんによるしこりがあっても気づきにくい可能性はあります。

乳腺症が起こる原因とは?

そもそも乳腺症という状態はなぜ起こるのでしょうか。乳腺は生理周期に併ってホルモンの影響を受けるため、毎月構造上の変化を繰り返しており、妊娠や授乳によってその変化はさらに大きなものとなります。

生理周期や妊娠・授乳に伴う変化は、必ずしも毎回乳腺全体に均一に起こり、完全に元に戻るとは限りません。部分的に強く変化が起きる、あるいは元に戻りきらない個所ができるなど、部位によって異なった反応が起きることがあります。それが積み重なっていくうちに、乳腺の中にさまざまな病変を残してしまう可能性があるのです。乳腺に起こる不均一な変化が、乳腺の硬さやしこり・嚢胞などになって現れたものが、乳腺症という状態です。

乳腺症の治療方法とは?

乳腺症自体は治療の必要性はなく、通常は毎年検診を受けましょうといわれて経過観察となります。乳腺症による痛みがつらい場合は、ホルモン剤による治療を行うこともあります。

胸の張りの原因に、妊娠の可能性も

妊娠すると、黄体ホルモンが通常の何倍も分泌されるため、胸の張りも強く出ることがあります。生理前の胸の張りが普段より強いと思ったら妊娠していたという場合もあります。

ただ、授乳の経験があると、乳腺の硬さが異なってくるため、必ずしも妊娠初期に胸の張りを自覚しないこともあります。月経前症候群による胸の張りなのか、妊娠による症状なのかは、胸の張りの程度やその他の症状で判別することはできません。高温期が2週間以上続いていたり、生理が予定より遅れている場合は、妊娠検査薬で調べるようにしましょう。

症状が辛い場合には、受診を

月経前症候群による胸の張りも、乳腺症も、いずれも症状がつらい場合は、一度婦人科で受診するようにしましょう。明らかなしこりが触れる場合は、乳腺外科で検査を受ける必要があります。また、痛みがある部分に皮膚の赤みがあったり熱がある場合は、乳腺に炎症が起きている可能性があるため受診が必要です。特に授乳中にこのような症状が出た場合は、すぐにお産をした病院に受診するか、乳房ケアを行っている助産師さんに相談しましょう。

生理前、生理中の胸の張りや痛みの対処方法とは?

生理前の胸の張りに対して、日常生活のなかでできる対処方法があまりないというのが正直なところです。前述の通り、ホルモンのバランスを整えても、胸の張りは改善しない可能性が高いため、食事や運動によって症状を改善させるということは難しいのです。人によっては、チョコレートなど特定の食品をとることによって胸が張りやすくなるという場合もありますので、何か症状を悪化させる食べ物がある場合は、生理前だけでもそれらの食品を控えるようにしてみるのもいいでしょう。

また、人によっては生理前になるとバストサイズが1~2カップ変化するケースもあります。生理周期によって、使う下着のサイズや材質を変えて対応するといいでしょう。妊娠中や授乳中に使う下着は、締めつけがなくワイヤーなど圧迫感のあるものが使われていません。生理前の張りや痛みが強い場合は、これらの下着を使ってみるのもいいでしょう。

胸から乳汁分泌がある場合は、プロラクチンが原因の可能性も

稀に、胸の張りや痛みがプロラクチンというホルモンの過剰分泌のせいで起きていることがあります。胸が張るだけでなく、乳汁分泌が見られる場合はプロラクチンの値を血液検査で調べる必要があります。プロラクチンが高くなる原因は、胃薬や向精神薬の副作用・脳腫瘍・運動のしすぎや過労・甲状腺機能低下症などが挙げられます。

プロラクチンを上げやすい薬を飲んでいる場合は、まずその薬をやめて数値が下がるかどうかを見ていきます。脳腫瘍が見つかった場合は、手術で腫瘍を取り除いたり、プロラクチンを下げる薬で治療していきます。

過労などによる軽度の高プロラクチン血症は、まず生活改善で様子を見ることもありますが、プロラクチンの数値が下がらなかったり、生理不順を伴っている場合や妊娠の希望がある場合は、プロラクチンを下げる薬を2~3ヶ月使う場合もあります。甲状腺機能異常による場合は、甲状腺の治療をまずは行います。

月経前症候群(PMS)が原因の場合の対処方法とは?

月経前症候群(PMS)による胸の張りがつらい場合は、ピルで排卵を抑える治療を行うこともあります。ピルは排卵を抑えるため、ホルモンの波をなくすことによって、生理前の症状を軽減することが可能です。

ただし、ピルにも黄体ホルモンが含まれているため、人によってはピルの副作用で胸の張りを自覚する場合もあります。黄体ホルモンの種類によって、症状の出方が異なるので、ピルの種類を変えたら胸の張りが出なくなるということもありえます。

一つの種類を試して合わなくても、他の種類に変えたら楽になる場合もありますので、ピルによる治療を検討する場合は、まず自分に合ったピルを探してみるといいでしょう。

症状が気になる程度であれば、葛根湯も

胸の張りを抑えたり、痛みを軽減する薬はないのですが、乳腺炎の時に使われるのが葛根湯です。炎症を抑えたり血行を良くする働きがあります。葛根湯は市販薬としてドラックストアなどでも手に入りますので、症状が気になるけれど受診するほどではないという場合に、まずは市販薬で改善を図ってみるのも1つの方法です。

乳腺症による症状がつらい場合は、乳腺外科での治療になります。乳腺症そのものは病気ではないので治療の対象にはならないことも多いのですが、どうしても痛みが強すぎるという場合は女性ホルモンを抑える治療を行う場合があります。ただ、ピルとは異なり、本来必要な女性ホルモンを抑えることになりますので、通常は長期間継続して行うことはありません。

胸の張り自体は大きな病気につながるものではなく、放置したからといって大事には至りません。ただ、症状が強すぎて日常生活に支障が出てしまう場合は、婦人科で相談してみることをお勧めします。

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私がお答えしました

産婦人科医 清水なほみ
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~院長。女性特有の病気を中心に日頃の不調を改善するためのアドバイスをいたします。

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