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生理前、生理中になると出てくる鬱(うつ)に似た症状と対処法とは?

生理前や生理中になると、急に涙が出てきたり、気分が落ち込んだり、鬱(うつ)っぽい症状になります。普段はこのようなことはないのですが、生理前や生理中にこうつのよう気持ちになるのは、どのような原因が考えられるのでしょうか?また、対処法も教えてください。

専門家からの回答
黄体ホルモンの影響で、生理前・生理中にうつの症状が現れる場合があります。
3行でまとめると?
  • 生理前にはホルモンバランスの変化により、心身に影響が起こる
  • ホルモンの影響により、精神的な作用が生理前~生理中に続く人も
  • 生理前の症状に悩んでいる場合は婦人科へ、生理周期に関連していない場合は精神科へ

生理前・生理中に出るさまざまな症状

月経(生理)前や生理中にはさまざまな心身の不調が現れる可能性があります。生理中に下腹部痛・腰痛・頭痛・下痢・吐き気などの不調が出る場合、それらを総称して「月経困難症」といいます。月経困難症のうちの下腹部痛と腰痛が、いわゆる「生理痛」です。

※「生理」は医学的には「月経」といいますが、ここでは以下、一般的になじみの深い「生理」という表記に統一いたします。

生理前、生理中にはさまざまな症状が

排卵後から生理が開始するまでの1~2週間の時期に出る、頭痛・めまい・むくみなどの身体症状や気分の落ち込み・イライラ・情緒不安定などの精神症状を「月経前症候群(PMS)」といいます。

月経前症候群の症状は非常に多彩で、上記の不調以外にも身体症状としては次のようなものが挙げられます。

・ニキビや肌荒れ
・腹痛・腰痛・おなかの張り
・吐き気・食欲の減退または増進
・不眠や過眠
・ほてりや発汗
・胸の張り

また、精神症状としては次のような症状が挙げられます。

・涙もろくなる
・怒りっぽくなる
・普段気にならないことが気になる
・集中力がなくなる
・昔の出来事を思い出す

など、さまざまな症状が挙げられます。月経前症候群の場合、生理が来るとそれらの症状がピタッと治まるのが特徴です。

体の不調だけでなく精神的な不調も

月経前症候群の中でも、特に精神症状が中心に出ており、その症状が重度の場合を「月経前気分障害(PMDD)」といいます。このPMDDは、一般的な月経前症候群の精神症状に比べて気分の落ち込みや感情の起伏が激しかったり「死にたくなる」「人に対して過度に攻撃的になる」など、自傷・他傷の危険性を伴っていたりします。PMDDのベースにはうつ病などの精神科的疾患を伴っていることもあり、婦人科的治療よりも精神科的治療が優先して必要になるケースも少なくありません。

なぜ生理前、生理中になるとうつっぽくなるの?

ホルモンバランスとは?

これらの生理前の不調は、ホルモンの影響を受けて出現します。よく「ホルモンバランスが悪いから」月経前症状が出ると勘違いしている方もいますが、月経前症状はホルモンの「バランス」が悪さしているのではなく、ホルモンが「上がったり下がったりする」ため、つまり「ホルモンの変動」が影響しているのです。

女性の心身の状態は、毎月ホルモンの「波」によって目まぐるしく変化していきます。これは卵巣から出る2つのホルモン、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」が生理周期によって変動するからです。正常な生理周期の人であれば、28~35日くらいの周期で月経期 → 卵胞期 → 排卵期 → 黄体期というサイクルを繰り返していき、周期的にホルモンの上下運動が起きます。詳しく解説しましょう。

月経期
卵胞ホルモンも黄体ホルモンも最も低くなる時期で、2つのホルモンが下がることによって子宮内膜がはがれて経血として出てきます。

卵胞期
卵巣のなかで排卵の準備が進んでいく時期で、卵胞ホルモンが徐々に増えていきます。この時期は、まだ黄体ホルモンの値は低くほとんど分泌されていません。生理周期が28日の人であれば、卵胞期の継続期間は7~10日間くらいになりますが、周期が長い人はこの卵胞期が長くなります。

排卵期
脳から排卵の命令が出て卵巣から卵子が飛び出てくる時期で、1~2日の期間しかありません。徐々に増えてきた卵胞ホルモン値が一気に上昇し、その後若干下がります。

黄体期
排卵後から次の生理が来るまでの時期で、妊娠が成立しなければ約14日間で終了します。排卵してから生理が来るまでの期間はほぼ一定のため、生理周期に関係なく黄体期の期間はほぼ2週間です。この時期は卵胞ホルモンも増えていきますが、それ以上に黄体ホルモン値が一気に上昇します。

妊娠していなければ、約10日でホルモンのピークは終わり、その後は徐々に下がっていきます。両方のホルモンが下がり切ると子宮内膜がはがれて月経が起き、「月経期」に戻ります。

ホルモンバランスの影響でうつっぽくなる

一連のホルモンサイクルの中で、ホルモンの影響を受けて、さまざまな心身の不調が現れる場合があります。

卵胞ホルモンの役割とは

卵胞ホルモンは一般的に心身の状態を安定させる作用を持っています。子宮内膜を厚くさせていくという作用のほかにも、次のような作用があります。

・骨を丈夫にする
・肌の調子を整える
・コレステロールや血糖値の上昇を抑える
・脳の働きを助ける
・皮膚や粘膜に潤いを保つ
・抑うつやイライラを抑える
・自律神経のバランスを整える

生理後から排卵までの時期は、この卵胞ホルモンが「増えていく」時期のため、比較的心身の状態が良好であることが多く、抑うつなどの精神症状も出にくくなります。生理周期のなかで、排卵期と黄体期の後半は、いったん増加した卵胞ホルモンが「減っていく」時期になります。この、「卵胞ホルモンが下がる」という現象が、気分の落ち込みや情緒不安定さを引き起こすのです。

黄体ホルモンの役割とは

また、黄体ホルモンは別名「妊娠のホルモン」といわれ、妊娠を成立&継続させるために非常に重要な働きを持っています。卵胞ホルモンの働きによって厚みが出た子宮内膜を、着床に適した状態に変化させ、妊娠を継続しやすくするのです。 しかし、それ以外にも次のような作用があります。

・体温を上げる
・水分を身体にためる
・胃腸の動きを鈍らせる
・血液をうっ滞させる
・皮脂分泌を促す
・乳腺を発達させる

そのため、むくみ・ダルさ・体重増加・便秘・肩こり・ニキビなど、どちらかというと体調の悪化を招くことになります。

黄体ホルモンは情緒不安定やイライラなどの精神症状も引き起こすため、排卵後に黄体ホルモンが増えるにつれて、気分が落ち込んだり精神的に不安定になる場合があるのです。

排卵後から月経期まで心身の不調が続く人も

生理前は黄体ホルモンの影響を受けて気分が落ち込みやすくなりますが、生理中も精神症状が継続する場合があります。これは、卵胞ホルモンが下がるため、精神的な安定が得にくくなるためと、月経期の腹痛や腰痛などの身体的負担が情緒不安定さを誘発している可能性が考えられます。

月経前症候群と月経困難症がある人の場合、排卵後から月経期までずっと心身の不調が続き、調子がよいのは卵胞期の約1週間しかない、というケースもあり得ます。

うつになる症状、気分が落ち込む症状の対処方法

自分の症状を把握する

生理前に精神的に不安定になりやすいかもしれないと感じたら、まずはどの時期にどのような症状が出ているのかを、基礎体温とともに記録をつけてみましょう。1~2周期の症状の出方を記録してみると、気分の落ち込みの原因が月経前症候群なのか月経困難症なのか、または生理周期とは全く無関係に起きているのかがハッキリします。

月経前症候群の場合は、排卵後から徐々に症状が出現し、生理が来るとスッキリと消えていきます。記録をつけてみたら生理が終わる時期から排卵期にかけても抑うつ症状が出ているという場合は、ホルモンの変動とは関係のない症状の可能性が高くなります。

また、常に落ち込みやすかったり情緒不安定さはあるけれど生理前に特にひどくなるという場合も、ベースにうつ状態や不安神経症などの別の疾患があって、それがホルモンの変動の影響を受けて生理前に増悪しているだけの可能性が考えられます。

病院による対処とは?何科に行けばいい?

記録をつけてみて、はっきりと生理周期との連動性が分かる場合は、婦人科を受診しましょう。逆に、あまり生理周期と関係なく抑うつ症状が出ている場合は、心療内科や精神科で相談してみた方がよいでしょう。

治療法は、薬物治療とカウンセリングになります。薬物治療では、気分がふさいだ感じになった時に用いる漢方薬や、抗うつ薬・抗不安薬・睡眠導入剤などを使うこともあります。また、精神症状以外にも生理前の腰痛や腹痛、月経痛などの症状も伴っている場合は、後述する低用量ピルや超低用量ピルが有効です。

ピルとはどんな薬?

ピルは卵胞ホルモンと黄体ホルモンがバランスよく含まれた合成ホルモン剤で、含まれている卵胞ホルモンの量によって低用量ピルと超低用量ピルに分類されています。中用量以上のホルモン量のピルもありますが、最近では副作用をできるだけ減らすためにホルモン量が少ないものを使うようになってきています。

また、含まれている黄体ホルモンの種類によって、第1世代から第4世代まであり、どのホルモンが含まれるかによって若干症状の出方が異なる場合があります。副作用の出方や症状の改善具合は個人差が大きいため、どのピルが「治療に適している」とはいえず、自分に合ったピルを見つけることが大事です。

進化を続ける低用量ピル

超低用量ピルの中には、海外では先に挙げた「月経前気分障害(PMDD)」の治療薬として用いられているものもあり、最近は120日間連続服用が可能なタイプも発売されているので、ピルを飲んでいても偽薬中や休薬中に心身の変調をきたすという場合は、連続服用することで不調が出やすくなる期間を減らすことが可能です。

ピルは脳に勘違いをさせる

ピルは、毎日一定量のホルモンを身体に取り込むことによって、脳に「ホルモンが充分出ている」と勘違いさせ、脳から排卵の刺激が出ないようにするものです。つまり、ピルの作用のメインは「排卵を抑える」というものです。

排卵しなければ、生理周期に伴うホルモンの「変動」が起きないため、生理前の不調も出にくくなります。また、子宮内膜の厚みを薄くする作用がありますので、生理前の腹痛や腰痛も出にくくなり、生理痛や生理中の経血量も軽くなります。

ピルの主な副作用は、吐き気・むくみ・頭痛・不正出血などの「マイナートラブル」と呼ばれる症状と、血栓症です。マイナートラブルは、約1割くらいの人に見受けられるものですが、飲み始めに症状が出ることが多く、ほとんどの場合、飲み続けているうちに症状が治まっていきます。そのため、飲み始めて数日間吐き気が気になっても、吐き気止めなどで症状をやり過ごしながら服用を継続していると、段々身体が慣れてきてそれらの症状が気にならなくなっていきます。

ピルを服用できない人とは?

血栓症は、血管に血液の塊が詰まってしまうもので、脳梗塞や肺塞栓症など重大な副作用につながりうるものです。ただ、血栓症リスクがない人がピルによって血栓を起こす頻度は非常にまれで、ほとんどの方は問題なく服用できます。片頭痛のある方や喫煙者など、「ピルを服用できない人」の条件に当てはまっていないかどうかは、あらかじめ問診票で確認します。

精神症状がメインならば抜本的解決を

精神症状がメインの場合は、カウンセリングは必須です。
抗うつ薬や抗不安薬はあくまで出ている症状を「抑えている」だけなので、抜本的解決にはなりません。また、薬の種類によっては依存性のある薬もありますので、これらの薬を服用する場合は「薬を飲みさえすれば楽になる」と思って使うのではなく、「一時的に症状を楽にして抜本的原因と向かい合う」ために使うという認識を持った方がよいでしょう。

抑うつ症状の背景にあるものは「ぶつけどころのない怒りや理不尽な思い」です。何らかの不満や怒りを感じながら、それを相手に「ぶつける」ことができず、我慢してため込んでいるとうつ状態になります。生理前に特にその症状が強くなる場合、

・女性としての生き方や対男性への感情
・妊娠出産に対する感情
・母親との関係性や母親が妊娠中に抱えた感情

などと関連して症状が出ている可能性が高く、これらの背景を読み解いていくことが抜本的解決につながります。

日常生活の見直しによる改善を!

前述した通り、生理前の症状はホルモンの「バランス」ではなく「変動」が影響しているため、ホルモンバランスを整えるというより、脳や神経がホルモンの変動に振り回されないように生活や食事を改善していった方がよいでしょう。

仕事や子育てが忙しすぎて時間の使い方が「自分のペース」ではなくなると、生活リズムが「振り回されている」状態になり、ホルモンの影響も受けやすくなります。生理前の症状には「ストレス」がよくないといわれていますが、時間の使い方も仕事の分量も家事や子育ての負担も「自分でコントロールできている感じがあるかどうか」が重要です。

目が回るほど忙しかったり、睡眠時間が十分に確保できていなかったり、食事の時間が自分の希望するタイミングでなかったりする場合は、まずはそれらを「自分のコントロール圏内」に入れて、きちんと調整するようにしましょう。

ホルモンバランスを整える食事と気分転換

気分の落ち込みを防ぐ働きを持つ神経伝達物質が「セロトニン」です。このセロトニンの分泌を促す方法としては、次のような方法が挙げられます。

・トリプトファンやビタミンB6を摂取する
・朝日を浴びる
・リズミカルな軽い運動をする

トリプトファンは、豆類や赤身の魚・チーズ・バナナなどに多く含まれる成分です。ビタミンB6はレバー・鶏肉・マグロ・カツオなどに多く含まれます。これらの食品をうまく摂り入れたり、サプリメントでビタミン・ミネラルを補うとよいでしょう。

バランスのよい食事を取り、早めに起きて朝日をしっかり浴び、ウォーキングやジョギングで1日をスタートする、という生活が「うつ状態」を作りにくい生活といえます。逆に、そのような生活をする「暇がない」と感じているとしたら、それ自体が不調の原因なのです。

私がお答えしました

産婦人科医 清水なほみ
ポートサイド女性総合クリニック~ビバリータ~院長。女性特有の病気を中心に日頃の不調を改善するためのアドバイスをいたします。

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