Q

生理前、生理中の腹痛の症状と対処法とは?

生理がはじまると、よく下腹部が痛くなるのですが、最近は生理前にも腹痛を感じるようになりました。このような生理前、生理中の腹痛はどのような原因が考えられるのでしょうか?また生理期間中の腹痛の対処方法についても教えてください。

専門家からの回答
婦人科医 松村圭子
生理前の腹痛もPMSの1つ。生理期間中の痛みにはプロスタグランディンを抑える鎮痛剤が効果的です。
3行でまとめると?
  • ホルモンの影響で生理前にも腹痛が発生する場合も
  • 血行の改善や食事を意識することで、生理前、生理中の腹痛を改善できることも
  • 痛みがひどい場合は、何らかの病気の可能性も。無理せず受診を

目次

生理前に起こる腹痛のタイプ

月経中(生理中)に現れる強い下腹部痛や腰痛、頭痛などの辛い症状は、女性にとって深刻な悩み。痛みだけでなく吐き気、嘔吐、下痢、疲労感、神経過敏、めまい、貧血などの症状が現れる人もいます。生理中に下腹部が痛くなる人は多いと思いますが、実は生理前にも腹痛が起こることがあります。

いつからいつまで症状が続くかには個人差がありますが、だいたい生理の3日前~10日前に起こる身体的症状(吐き気、めまい、胸の張り、むくみなど)や精神的症状(イライラ、落ち込み、だるさ、眠気など)で、生理の開始とともに消失もしくは軽減されるものを「月経前症候群(PMS)」といいます。
生理前の腹痛の場合も、生理開始とともに消失もしくは軽減されるものは、PMSの症状の1つとなります。

腹部の痛みの程度や種類には個人差があり、痛みが軽く、普段と同じ生活ができる人もいれば、なかには仕事に支障を来たしてしまう人も。痛みの種類としては、次のような症状が挙げられます。

・下腹部に生理痛のような鈍痛がある
・下腹部が張って痛い
・下腹部がチクチクする
・みぞおちのあたりが痛む
・胃がキリキリ痛むなど

さまざまな痛みとなって現れる生理前の辛い腹痛、少しでも緩和させるにはどのようなことに注意すればいいのでしょうか?

※「生理」は医学的には「月経」といいますが、ここでは以下、一般的になじみの深い「生理」という表記に統一いたします。

腹痛に苦しむ女性

生理前の腹痛の緩和に今すぐできる対処法

生理前の腹痛の程度や種類は千差万別。
ここでは生理前の腹痛を緩和する方法と、その方法が効果的な痛みの種類についてご紹介しましょう。

鎮痛剤

生理前に、生理痛のような鈍痛がある場合は、生理痛の原因物質である「プロスタグランディン」の産生を抑えてくれる鎮痛剤が効果的です。鎮痛剤は、痛みが本格的になってからでは効きにくくなるので、痛みがピークになる前に飲むようにしましょう。

体を冷やさない

冷えると血行が悪くなり、自律神経の働きも乱れてしまいます。
血行が悪くなると、プロスタグランディンが体外に排出されにくくなるため、痛みが続いてしまいます。また、自律神経の働きが乱れることで、胃痛が起こることがあります。

生理前に、生理痛のような痛みがある場合や、胃痛が起こる場合は、体を冷やさないように注意しましょう。

体を動かす

運動不足は血行不良や冷えを招き、プロスタグランディンの体外への排出の滞りや、自律神経の働きの乱れにつながります。また、生理前の便秘の悪化の原因にもなります。

生理前に、生理痛のような痛みがある場合や、胃痛が起こる場合、便秘で下腹部が張ったり痛みがある人は、しっかり体を動かすようにしましょう。

ツボを押す

血行不良や自律神経の乱れを整えて腹痛を改善するには、ツボ押しを試してみてもよいでしょう。
「三陰交」(内くるぶしの一番高いところから指4本分上で、太い骨の後ろ側にあるくぼみの部分)は、消化器、肝臓、腎臓の働きを助けるとともに、女性特有の不調の改善に効果的なツボです。

三陰交に親指をあてて、残りの指で足をつかみ、骨の際に沿って刺激してみましょう。痛気持ちいいくらいの強さで、ゆっくり押してゆっくり離すのがポイントです。

食物繊維を摂る

生理前に便秘になって、下腹部が張ったり痛みがある場合は、食物繊維を摂るように心がけましょう。食物繊維には、「水溶性」と「不溶性」があります。水溶性食物繊維は、海藻類や果物、大麦などに豊富に含まれており、腸内の善玉菌のエサになります。

一方、不溶性食物繊維は、根菜類やきのこ類、玄米などに豊富に含まれており、腸のぜん動運動を促します。ただし、不溶性食物繊維は、人によってはお腹の張りがひどくなったりすることがあるので、食材が自分に合うか合わないかを見極めることが大切です。

生理前の腹痛は、さまざまな痛みの種類があり、痛みに合わせて対処していくことが大切です。自分の腹痛がどのような痛みなのかを認識して、適切に対処していきましょう。

生理痛のような腹痛の原因と対処法

生理時に起こる下腹部痛は、子宮内膜から分泌される「プロスタグランディン」というホルモンの作用によるもの。このホルモンが、経血を押し出そうとして子宮の収縮を促すために下腹部痛が生じます。さらに、プロスタグランディンは痛みや炎症を起こす作用があるので、下腹部痛だけでなく、頭痛や腰痛も引き起こしてしまうのです。

実は、このプロスタグランディンは、生理の直前から分泌されはじめるため、生理前にも生理痛のような下腹部痛が起こることがあります。プロスタグランディンの分泌量には個人差があり、体質的に分泌が多い人では痛みが強く出る傾向があります。

このような痛みの予防・改善法としては、次のようなことが挙げられます。

妊娠の可能性を考える

生理前の下腹部痛と思っていたものの、生理開始予定日を1週間以上過ぎても生理が来ないようなら、妊娠している可能性があります。妊娠初期の場合は、基礎体温で高温期が続き、だるさ、めまい、胸の張りなどの症状が現れることがあります。

チクチクした下腹部の軽い痛みが起こることもありますが、激痛がある場合は切迫流産や子宮外妊娠の可能性があります。妊娠の可能性がある場合は、産婦人科を受診して診断を仰ぐようにしましょう。

体を冷やさない

冷えると血行が悪くなってしまいます。血行が悪くなると、プロスタグランディンが体外に排出されにくくなるため、痛みが続いてしまうのです。

冷たい飲食物は控える、入浴ではシャワー浴ではなくバスタブにゆっくり浸かる、湯たんぽやカイロなどでお腹を温めるなどして冷えを予防しましょう。

体を動かす

運動不足は血行不良や冷えを招き、プロスタグランディンの体外への排出を滞らせてしまいます。適度な運動で、プロスタグランディンの排出を促しましょう。

筋トレやストレッチなどの無酸素運動は、筋肉を増やし、熱を生み出しやすくして冷えを予防してくれます。また、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動は、脂肪の燃焼を促してくれます。無理のない範囲で、無酸素運動と有酸素運動を組み合わせて血流を促しましょう。

また、エレベーターやエスカレーターなどは使わずなるべく階段を使う、一駅手前で電車を降りて歩くなど、日常生活のなかで体を動かす機会を作るようにすることも大切です。

痛みの改善が期待できる食物を摂る

DHA・EPA
アジやイワシなどの青魚に豊富に含まれるオメガ3系脂肪酸のDHAやEPAは、プロスタグランディンを合成するのに必要な酵素の働きを抑えるため、生理痛のような痛みの改善が期待できます。

ビタミンE
ビタミンEには血管を拡張して血行を良くする働きがあります。ナッツ類やカボチャ、ゴマ、アボカドなどに豊富に含まれています。

香味野菜
ショウガには、体を温めてくれる「ジンゲロール」という成分があるのですが、これは加熱することによってさらに効果の高い「ショウガオール」という成分に変わり、温め効果をアップしてくれます。また、ニンニクやタマネギに含まれる「アリシン」という成分も血流を促して体を温めてくれます。

漢方薬
体全体のバランスを整え、自然治癒力を高めていく「漢方医学」。漢方薬は、症状や体質、性格などその人をトータルに診て処方されます。血行を改善したり、自律神経のバランスを整えるなどの働きによって体質を変えることによって、痛みの改善が期待できます。

よく用いられるのは、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」、「加味逍遙散(かみしょうようさん)」、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」などで、症状や体質によって処方されます。漢方薬を服用してみたい場合は、病院を受診して相談してみましょう。

ショウガ

痛みを悪化させる恐れのある飲食物を控える

カフェイン
カフェインには、血管を収縮させる作用があるため、血行を悪くして体を冷やしてしまいます。カフェインはコーヒーや紅茶、緑茶のほか、ココア、コーラ、チョコレートなどにも含まれています。生理の1週間くらい前からカフェインの摂取は控えるようにし、飲み物は温かいハーブティなどにすると良いでしょう。

精製された食べ物
白米や白砂糖など精製されたものは体を冷やすとされていますので、玄米や黒糖など精製されていないものを摂るようにすると良いでしょう。

砂糖や脂肪分の多い食品
甘いスイーツやスナック菓子など、砂糖や脂肪分、添加物の多い食品を摂りすぎると、「お血」といわれる、いわゆる「血液どろどろ」の状態になり、血流が悪くなってしまいます。血行不良は冷えを招いてしまいますから、これらの食べ物はなるべく控えるようにしましょう。

腸内ガスを溜めない

排卵後から生理前までの黄体期は、女性ホルモンのひとつである「プロゲステロン」が腸のぜん動運動を抑えるために、便秘になったり腸内にガスがたまっておならが出やすくなりがちな時期。腸内環境を改善する「食物繊維」をしっかり摂るようにしましょう。

水溶性食物繊維は、善玉菌のえさになり、糖質の吸収を穏やかにする効果も。不溶性食物繊維は、腸のぜん動運動を促す働きがありますが、体に合わない場合はかえってガスが溜まってお腹が張ることもあるので、自分に合うかどうか、食材をよく見極めるようにしましょう。

ご紹介した運動と食べ物に注意をして、生理前や生理中の腹痛を改善していきましょう。

下痢をともなう腹痛の原因と対処法

生理がはじまる前は便秘に悩まされていたのに、生理が始まった途端、今度はお腹がゆるくなって下痢になってしまうという人は少なくないのではないでしょうか?生理中の下痢もやはり、ホルモンの影響が大きいと考えられます。

腹痛に苦しむ女性

プロスタグランディンはさまざまな痛みをもたらす

生理時に下痢になってしまう原因は、子宮内膜から分泌されるプロスタグランディンというホルモンの作用です。このホルモンは、生理痛の原因になるホルモンで、生理時に経血を押し出そうとして子宮の収縮を促すために、下腹部痛が生じます。

また、プロスタグランディンは、腸のぜん動運動を促す作用もあるため、ホルモンの分泌量が増えると便中の水分が体内に十分に吸収されないまま便が急速に腸を通過して、下痢を引き起こすことがあるのです。

さらに、プロスタグランディンは痛みや炎症を起こす作用があるので、下腹部痛だけでなく、頭痛や腰痛も引き起こしてしまうのです。プロスタグランディンの分泌量には個人差があり、体質的に分泌が多い人では痛みや下痢などの症状が強く出る傾向があります。

生理中のプロゲステロンの低下

生理前は女性ホルモンの1つであるプロゲステロンの作用で腸のぜん動運動が抑えられたり、体内に水分がたくわえられるため便中の水分が減って、便秘になりやすくなりますが、生理が始まると、プロゲステロンの分泌が低下します。

生理前の便秘が解消されることも、生理中の下痢に関係していると考えられています。

生理期間中のストレスの影響

生理前や生理中はホルモンバランスの変化などの影響により、イライラしたり情緒不安定になったりとストレスを感じがち。このような生理中のストレスによって、腸の動きを司る自律神経の働きが乱れることで、下痢になることもあります。

生理中の下痢は、生理前の便秘の後で起こることが多いので、最初は便の量が多くなるケースもあります。また、プロスタグランディンやプロゲステロンなどの作用によって腸のぜん動運動が活発になって起こる下痢なので、お腹を冷やしたときや水分を摂りすぎたときの下痢と、形状は変わりありません。

生理中には下痢になりやすい原因がいくつもあります。そのため、下痢が起こるのが、生理中にのみの場合は、特に何らかの疾患が潜んでいるわけではないと考えてよいでしょう。

生理中に起こる下痢の対処方法とは?

生理に伴う下痢は何とかしたいけど、どうしたらよいのかわからないので、何の対処もしていないという人も多いのではないでしょうか?生理中の下痢の症状は、基本的には自然に治まっていくものですが、早めに症状を改善させるためには、次のようなことに気を付けましょう。

血行を良くする

血行をよくして体内に滞っているプロスタグランディンの排出を促すことが大切です。

ストレッチなど軽い運動をして血行を促すようにしましょう。また、冷えは血行不良を招くので要注意です。カイロを背中とお腹に貼ったり、腹巻や湯たんぽでお腹を温めるのもよいでしょう。また、生理中でもお風呂に浸かっててしっかり体を温めるようにしましょう。血行が促され、リラックス効果も得られます。

下痢を悪化させる恐れのある飲食物を控える

体を冷やす冷たい飲食物、アルコール、香辛料などの刺激物は控えるようにし、消化のよいものを食べるようにしましょう。

腸によいといわれる食物繊維には、水に溶けやすい「水溶性食物繊維」(海藻類、果物などに豊富に含まれる)と水に溶けにくい「不溶性食物繊維」(穀類、きのこ類、根菜類などに豊富に含まれる)があるのですが、不溶性食物繊維は腸を刺激してぜん動運動を亢進させてしまうので、下痢のときは控えるようにしましょう。

また、下痢によって水分が体内から排出されるため、脱水にならないように水分をしっかり補給することも大切です。

下痢がひどくて辛い場合は、我慢しないで市販の下痢止めを使いましょう。通勤や通学途中などの急な下痢が心配なら、水なしで飲める下痢止めを持っておくと安心です。生理痛と下痢が同時にあるような場合は、鎮痛剤と下痢止めを併用して飲んでも通常は問題ありません。

だだ、プロスタグランディンの産生を抑えるタイプの鎮痛剤であれば、痛みを抑えるとともに腸のぜん動運動も抑えてくれるので、下痢に対する効果も期待できます。

海藻サラダ

痛みがひどい場合は

生理中の腹痛や腰痛、頭痛などの症状がひどく、日常生活に支障をきたしてしまうほどの状態を「月経困難症」といいます。月経困難症には、特に原因となる疾患がない「機能性月経困難症」と、子宮内膜症や子宮筋腫など何らかの疾患が原因となって起こる「器質性月経困難症」があります。

「痛み止めを飲んでも効かない」「痛み止めを飲む回数や量が増えてきた」など症状がひどい場合には我慢しないで婦人科を受診しましょう。 

機能性月経困難症

機能性月経困難症の場合は、鎮痛剤や低用量ピルの内服などの治療法があります。

器質性月経困難症

器質性月経困難症で、子宮内膜症が原因の場合は、症状として激しい生理痛とともに、排便痛や性交時痛が見られることがあります。子宮筋腫などが原因の場合は、やはり激しい月経痛とともに、過多月経が見られることがあります。治療法としては、子宮内膜症や子宮筋腫の場合も、鎮痛剤や低用量ピルなどの薬物療法や、手術が状態に応じて選択されます。

生理前や生理中の傷みがひどい場合は、我慢せずに婦人科を受診し、何らかの疾患がないかの確認をするとともに、必要に応じて適した治療を受けるようにしましょう。

この記事をシェアする

私がお答えしました

婦人科医 松村圭子
成城松村クリニック院長。女性の生涯に寄り添い、女性に起こりやすい不調の悩みにわかりやすくお答えいたします。
Facebook:https://www.facebook.com/成城松村クリニック-384386631694786/
Twitter:https://twitter.com/seijofujinka

関連する記事